キャリアコンサルタントの歴史とこれからについて

キャリアコンサルタントの歴史とこれからについて 記事

もともと日本には存在しなかったキャリアコンサルタントという職業ですが、どういった経緯でどのように普及していったのでしょうか。
今回はキャリアコンサルタントの歴史を紐解き、誕生の経緯からこれからの展望まで詳しくご紹介します。

キャリアコンサルタントの誕生

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日本では1980年代後半から1990年代初頭にかけて、企業内の人事部門の支援や個人のキャリア形成をサポートする専門家としてキャリアコンサルタントが登場しました。
その経緯には以下のような背景があります。

高度経済成長期の終焉

1980年代後半、日本の高度経済成長期が終わりを迎え、経済成長が鈍化し始めました。
それまでの終身雇用制度や年功序列が持続しづらくなり、個々のキャリア形成が重要視されるようになりました。

労働市場の変化

労働市場も変化し、非正規雇用が増加する一方で、企業内でのキャリアアップや再就職が難しくなりました。
これにより、個々のキャリア形成を支援する専門家の需要が生まれました。

企業の人事戦略の変化

企業の人事戦略も変化し、人材育成や能力主義を重視するようになりました。
キャリアコンサルタントは従業員のスキルアップや能力開発を支援し、企業の人材戦略に貢献する役割を担うようになりました。

アメリカのキャリアカウンセリングの影響

アメリカでは既にキャリアカウンセリングが確立されており、その手法や考え方が日本にも導入されるようになりました。
キャリアコンサルタントはアメリカのキャリアカウンセリングの影響を受けながら、日本独自のキャリア支援のスタイルを確立しました。

キャリアコンサルタントがいない時代はどんな社会だった?

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キャリアコンサルタントが誕生する前の社会には以下のような特徴がありました。

雇用の安定性

過去の社会では、一度就職すれば終身雇用が一般的であり、雇用の安定性が高かったため、キャリアの転換やアドバイスを求める機会が少なかったです。

企業内の昇進・キャリアパス

企業は従業員に対して独自の昇進システムやキャリアパスを提供しており、個々のキャリアプランニングが企業内で主に行われていました。

職業訓練や職業相談

キャリアコンサルタントが存在しない時代でも、職業訓練や公共機関による職業相談などがありましたが、
その範囲は限定的で、現代のキャリアコンサルタントが提供するような包括的なサポートは提供されていませんでした。

コネクションや人脈重視

過去の社会では、新しい仕事や転職をする際には、家族や友人、知人などの人脈が重要視されていました。
そのため、専門的なキャリアアドバイスを求めるよりも、自分のネットワークを活用して仕事を探すことが一般的でした。

グローバル化の影響が限定的

グローバル化が進んでいない時代では、異文化や異業種への適応があまり求められず、キャリアに関するアドバイスやサポートが特に必要とされていませんでした。

経済バブル崩壊後のキャリアコンサルタントの需要の高まり

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経済バブル崩壊後の雇用不安や企業のリストラが進む中、キャリアコンサルタントによるキャリア支援の需要が徐々に高まっていきます。
この時期からキャリアコンサルタントは個々のキャリア形成や転職支援だけでなく、企業の人材育成や働き方改革にも貢献していく役割を担うようになりました。

雇用不安の増加

バブル崩壊後の不況により、企業が業績悪化やリストラを進めるようになり、雇用不安が一気に増加しました。
これにより、再就職や転職を検討する人が増え、キャリアコンサルタントの支援を求める人が増えました。

終身雇用制度の崩壊

バブル崩壊後、経営環境が厳しくなり、企業は終身雇用制度や年功序列を見直すようになりました。
これにより、従来のような安定したキャリアパスが保証されなくなり、個々のキャリア形成が重要視されるようになりました。
キャリアコンサルタントは、このような変化に対応するためのキャリアプランニングや転職支援を提供するようになりました。

スキルアップの重要性

企業は、競争力を維持するために効率化やスキルアップを求めるようになりました。
そのため、従業員は自身のスキルや知識を向上させることが求められ、キャリアコンサルタントは、スキルアップやキャリアアップを支援する役割を果たすようになりました。

中高年層への支援の必要性

バブル崩壊後、中高年層がリストラの対象となることが増えました。
これにより、中高年層が再就職や転職を余儀なくされることが増え、キャリアコンサルタントが彼らのキャリア再建をサポートする役割が求められました。

グローバル化とキャリアコンサルタントの専門化

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グローバル化が進む中、海外進出や異文化コミュニケーション能力が求められるようになり、キャリアコンサルタントの専門性も高まりました。
専門性が高まった理由としては以下の要素が挙げられます。

国際的なビジネス環境の変化

グローバル化の進展に伴い、企業は国際的な競争にさらされるようになりました。このため、従業員は異文化コミュニケーションや外国語能力など、グローバルなビジネス環境で活躍できるスキルが求められるようになりました。
キャリアコンサルタントは、これらのスキル習得やキャリアプランニングを支援する専門性を身につける必要がありました。

海外進出を行う企業の増加

多くの日本企業が海外進出を進める中、海外で働く従業員のサポートや海外人材の採用・育成が重要になりました。
キャリアコンサルタントは、これらのニーズに対応するために、国際的な人材マネジメントや異文化人材育成の知識を習得する必要がありました。

グローバル人材の需要増加

グローバル化が進む中で、国際的なビジネス経験や異文化対応力を持つグローバル人材の需要が増加しました。
キャリアコンサルタントはグローバル人材のキャリアプランニングや転職支援に対応できる専門性が求められました。

留学生や外国籍労働者の増加

留学生や外国籍労働者の数が増加する中、彼らのキャリア支援や就職活動のサポートが必要となりました。
キャリアコンサルタントは異文化背景を持つ人々のキャリア形成をサポートする専門性を身につけることが求められました。

キャリアコンサルタント業界の認定制度の導入

2000年代に入ると、キャリアコンサルタントの資格や認定制度が整備され、業界の信頼性が向上しました。
キャリアコンサルタントの質を担保するための認定制度の代表的な制度として、キャリアコンサルティング技能士とキャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)の制度があります。

これらの認定制度は、キャリアコンサルタントの専門性を向上させ、顧客への信頼性を高めることを目的としています。
また、資格を持つキャリアコンサルタントは自身のスキルや知識を磨くことで、より高品質なサービスを提供できるようになります。さらに、これらの資格は、キャリアコンサルタント自身のキャリアアップや市場価値の向上にも寄与しています。

キャリアコンサルティング技能士

日本国内で広く認知されているキャリアコンサルタントの資格で、独立行政法人・職業能力開発総合大学校(OUJ)が主催し、中央職業能力開発協会が後援しています。
この資格は、キャリアコンサルタントの基本的なスキルや知識を証明するもので、国家資格ではありませんが、民間資格としての信頼性が高いとされています。

また、キャリアコンサルティング技能士には、1級と2級の2つのランクがあります。
1級は経験豊富なキャリアコンサルタントや指導的立場にある者を対象としたもので、2級はキャリアコンサルタントの基本的な業務をこなすことができる者を対象としています。

キャリアディベロップメントアドバイザー (CDA)

キャリアディベロップメントアドバイザー (CDA) は、アメリカのキャリアカウンセリング資格を日本向けにアレンジしたもので、一般社団法人日本キャリア開発協会(JCDA)が認定しています。
この資格は、国際的なキャリアカウンセリングのスキルや知識を有していることを証明するもので、グローバルな視野を持つキャリアコンサルタントを対象としています。

取得にはJCDAが提供する研修プログラムや試験に合格する必要があります。
また、CDAを維持するためには、定期的な継続教育や実務経験が求められます。

女性や高齢者を対象としたキャリアコンサルタントのサービス拡大

キャリアコンサルタントは、女性の社会進出や高齢者の再就職支援など、多様なニーズに対応するサービスを展開しました。

オンライン技術の進化とキャリアコンサルタント業界への影響

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オンライン技術の進化により、ビデオ通話やチャットツールを利用した遠隔でのキャリアコンサルティングが普及しています。
これにより、顧客は地理的な制約なく、自宅や職場でキャリアコンサルタントのサービスを受けることができるようになりました。

また、コンサルタントも幅広いエリアの顧客にサービスを提供できるようになり、ビジネスチャンスが拡大しています。
キャリアコンサルタント向けの研修やセミナーがオンラインで提供されるようになったことでコンサルタントは時間や場所の制約なく、自分のスキルアップや知識の更新ができるようになりました。

さらにデータ分析や人工知能(AI)の活用がキャリアコンサルタント業界でも増えてきています。
データ分析を用いることで、顧客のキャリア選択や適性をより客観的に評価することが可能となり、効果的なキャリアアドバイスが提供できます。
また、AIを活用したチャットボットや自動レコメンデーションシステムを使って、顧客に対するサポートを効率化することも可能となっています。

日本のキャリアコンサルタントの未来展望

キャリアコンサルタントの未来は技術革新や労働市場の変化への対応、専門性の向上、クライアントの多様化への適応、オンラインとオフラインの融合がキーファクターとなるでしょう。
さらに業種や職種の専門家との連携、メンタルヘルスへの対応、ライフステージに応じたサポート、キャリア教育の重視が求められるでしょう。
これらの要素を取り入れたキャリアコンサルタントは顧客が自分のキャリアを効果的に構築・管理することができるようサポートし、業界全体の品質向上に寄与していくことが期待されます。

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